
決算月の2ヶ月以内に納付しなければならない法人税ですが、手元に十分な資金がなく納付期限までに法人税を納付するのが難しいケースがあります。
そんな時、一体どう対処すればいいのでしょうか。法人税が払えない場合の対処方法について紹介したいと思います。
法人税を滞納するデメリット
やむを得ない理由で法人税が払えない場合、法人税を滞納することになります。では、法印税を滞納するデメリットとはどのようなことがあるのでしょうか。
延滞税がかかる
納付期日までに法人税を納めないと、延滞税というペナルティが課せられます。
加算税がかかる
法人税が払えそうにないからといって、法人税を申告せずにいると、税務署の調査が入り法人税の滞納が発覚します。
この場合、加算税という税金が延滞税とは別に発生します。加算税には以下の区分があります。
加算税の区分 | 詳細 |
---|---|
無申告加算税 | 申告書を申告期限までに提出しなかった場合に課せられる加算税 |
過少申告加算税 | 申告期限に提出された申告額が過少だった場合に課せられる加算税 |
不納付加算税 | 納付期限までに源泉徴収税を納付しなかった場合に課せられる加算税 |
重加算税 | 申告を隠蔽した場合、無申告加算税、過少申告加算税、不納付加算税に代わって課税される加算税 |
本来なら納付しなくてはいけない法人税を納付しないと、滞納扱いになり、加算税が課せられるデメリットがあります。
加算税の税率は高いので、更に納付額が増えて負担になってしまいます。
差し押さえられる
法人税の滞納が続くと、財産の差し押さえというデメリットが待っています。法人に対する財産の差し押さえの対象は、現金・預金・不動産・動産・保険金・売掛金など全ての資産です。
特に、取引口座を差し押さえられてしまうと、法人税を滞納していることが銀行に知られることになり、銀行との取引停止や新規融資が行われないといったデメリットがあります。更に、銀行側も資金を回収しようと動いてきます。
銀行に資金を回収されると倒産というデメリットがあります。銀行だけでなく、売掛金を差し押さえられることで、取引先にも法人税の滞納が知られることになり、信用を失ってしまいます。
このように、延滞税や加算税の負担も大きいですが、差し押さえまでになると、非常に大きなデメリットしかないので法人税は滞納しないようにしましょう。
法人税の支払いを待ってもらうことは可能なのか?
法人税を滞納すると、とても重いペナルティが課せられるため、できれば少し支払いを待ってもらいところです。では、法人税の支払いは待ってもらうことができるのでしょうか。
法人税が納付できなくても猶予制度がある
法人税の本来の納付期限は、事業年度が終了した日の翌日から2ヶ月以内と定められています。(※法人によっては、前年度の実績により中間申告及び中間納付が必要な場合があります)
この納付期限までに法人税が納められない場合でも、申請を行えば法人税の納税の猶予が認められる場合があります。
納税の猶予を受けることができる期間は、申請者の財産や収支の状況に応じて、最も早く完納できると認められる期間で、1年の範囲となっています。
この1年以内に全額納付ができなかった場合は、更に1年の猶予期間を延長することができる場合があります。
法人税が納付できなくても、要件に該当すれば最大2年間法人税の支払いを待ってもらえるということです。。
法人税の納税の猶予が認められるための要件
法人税の納税の猶予が認められるためには、下記の要件全てに該当しなくてはいけません。
①次のAからFのいずれかに該当する事実があること
A.納税者がその財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、または盗難に遭ったこと
B.納税者又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと
C.納税者がその事業を廃止し、又は休止したこと
D.納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと
E.納税者に上記AからDに類する事実があったこと
F.本来の期限から1年以上経過した後に、修正申告などにより納付すべき税額が確定したこと
②猶予該当事実に基づき、納税者がその納付すべき国税(法人税)を一時に納付することができないと認められること
③申請素が提出されていること(上記①Fの場合は納期限までの提出)
④原則として、担保の提供があること
納税の猶予申請のための書類
法人税の納税の猶予を受けるためには申請が必要です。申請のための書類は以下の通りです。
・納税の猶予申請書
・資産及び負債の状況、収入及び支出の状況を明らかにする書類
・担保提供に関する書類
・災害などの事実を証する書類
申請を行い猶予期間の延長が認められた場合に限り、法人税の支払いを待ってもらうことができるので、早めに所轄の税務署に申請を行うようにしましょう。
滞納している法人税の免除は可能なのか?
法人税の支払いは、申請をすることで待ってもらうことができますが、支払いの目処が立たない場合、滞納している法人税の免除は可能なのでしょうか。
残念ながら、滞納している法人税の免除は不可能です。一昔前は、一部免除をしてもらえることもあったようですが、最近は行政の税収も、担当者の対応も厳しくなってきているため、免除は期待できません。
法人住民税や法人事業税といった地方税に関しては、条件に合致する場合に限り、課税免除になるケースがあります。但し、定められた日までに申告をする必要があるので注意してください。
法人税の未納分の分割払いは可能なのか?
一括で法人税が納付できないものの、分割ならなんとか払えそうな場合、分割払いに対応してくれるのでしょうか。
残念ながら法人税には延納の制度がありません。ただ、法人税の未納分の分割払いは、税務署との交渉次第で可能です。
交渉時には、未納分の法人税の支払い計画や、事業計画書、資金繰り表といった資料を持参して、具体的な分割払いの支払い計画を提示しましょう。
滞納している法人税に利息はつくのか?つくならどれぐらい?
法人税を滞納してしまった場合、法人税に利息はつくのでしょうか。また、つくならどれぐらいの税率が課せられるのでしょうか。
法人税を滞納すると延滞税がかかる
法人税を滞納すると、延滞税という利息に相当する税金が課税されます。延滞税の税率は以下の通りです。
納付期限日翌日~2ヶ月以内
・年率7.3%と特例基準割合+1%のいずれか低い割合を適用
・特例基準割合:年率2.6%
納付期限翌日~2ヶ月超
・年率14.6%と特例基準割合+7.3%のいずれか低い割合を適用
・特例基準割合:年率8.9%
場合によっては加算税がかかる
法人税を払うのが難しいからと、法人税の申告をせず納付をしなかった場合、滞納扱いとなり延滞税と併せて加算税も課せられることになります。加算税の税率は以下の通りです。
加算税の区分 | 税率 |
---|---|
無申告加算税 |
15% 税務署長による更正又は決定があることを予見せずに納税申告書又は修正申告書を提出した場合には5%に軽減される |
過少申告加算税 |
修正申告又は更正があった(税額を過少に申告していた)場合10% 税務署長による更正又は決定があることを予見せずに修正申告書の提出をした場合は免除 |
不納付加算税 | 10% |
重加算税 |
過少申告重加算税:35% 無申告重加算税:40% 不納付加算税:35% |
法人税が払えないときの良い対処方法
法人税の納付には猶予制度があるものの、分割してもらうには交渉が必要であったり、免除制度がなかったりと、法人税が支払えないときの状況は結構厳しいです。
そんな法人税が払えない厳しい状況のときの良い対処方法を紹介したいと思います。
銀行から融資を受ける
会社によっては、黒字にも関わらず現金や預金などがなく、法人税の納付期日までに資金繰りがつかず、法人税が払えない場合があります。
そんな時に頼れるのが、銀行の融資です。銀行の融資は税金の支払いのためにも利用することができます。
納税のための資金は、使途が明確なため比較的銀行から借りやすく、取引銀行の融資実績をつくることもできるので、良い対処方法だと言えるでしょう。
税務署に相談する
借入枠の関係で銀行からの融資も難しく、法人税が払えない場合は税務署に相談しましょう。
税務署への相談は無料ですし、納税の意思があることをアピールするためにも、法人税が払えないときは税務署に必ず相談しましょう。
支払えない分の法人税は、交渉次第で分割払いも可能です。どのように納付していくかなどの相談をすることもできます。
換価の猶予の申請をする
換価の猶予とは、すでに差し押さえられた財産の換価(売却)が猶予される制度です。
また、差し押さえによって事業の継続や生活の維持を困難にする恐れがある財産の、差し押さえ猶予または差し押さえを解除する制度でもあります。
換価の猶予が認められた場合、猶予期間中の延滞税の一部は免除されます。財産を差し押さえられないためにも、法人税の納付が難しい場合は、換価の猶予の申請をしておくといいでしょう。
換価の猶予を受けるためには、以下の全ての要件を満たす必要があります。
換価の猶予の申請条件
・国税を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められる
・納税について誠実な意思を有すると認められる
・換価の猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がない
・納付すべき国税の納期限から6ヶ月以内に「換価の猶予申請書」が所轄の税務署に提出されている
・原則として、猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供がある
換価の猶予の申請に必要な書類
【納税額が100万円以下の場合】
・換価の猶予の申請書
・財産収支状況書
【納税額が100万円超の場合】
・換価の猶予の申請書
・財産目録
・収支の明細書
申請条件と必要書類を確認した上で申請してください。換価の猶予が認められるのは1年以内です。
法人税を滞納すると、すぐにではありませんが会社の資産が差し押さえられます。
資産が差し押さえられた場合、倒産の可能性が高くなったり、取引先からの信用を失ったりと、会社にとってのリスクが高まります。
リスクを回避するためには、融資を受けてでも法人税を納付した方がいいと言えます。
融資が受けられない場合は、税務署に納付する意思があることを伝えた上で、今後の納付方法を相談したり、換価の猶予の申請を行って差し押さえられた資産が売却されないように対策をとったりしておくと安心です。
法人税が払えないときは、対処方法を誤らないように注意してください。
法人税が払えないときのダメな対処方法
法人税が払えないときにきちんと対処をしなければ、今後の会社経営にもリスクを与えかねません。
先に法人税が払えないときの良い対処方法について紹介しましたが、逆に法人税が払えないときのダメな対処方法とはどのようなものなのでしょうか。
放置しておく
いろいろと指摘されるのが億劫で税務署へ相談に行かなかったり、督促があっても無視をしたりするなど、法人税が払えないことを放置すること法人税を滞納するデメリットでも述べたように、延滞税の発生や資産が差し押さえられます。
申告しない
法人税が納付できそうにないからと、法人税の申告を行わないことは絶対にやめましょう。いずれは税務署から連絡が入り、税務調査や現況調査が行われ、無申告の法人税をまとめて納付することになります。
この時、延滞税に加えてペナルティの加算税も課せられます。また、2年連続で期限内に申告していない場合、青色申告の承認が取り消されることになります。
他にも、銀行からの借入ができなくなる、許認可が受けられないといったデメリットがあります。税務申告は法人の義務なので、必ず行うようにしましょう。
法人税が払えなくなったらどこに相談すればいいのか?
法人税が払えない場合、税務署に相談するという選択肢がありますが、税務署のどこの部署に相談すればいいのでしょうか。また、税務署以外に相談するところはあるのでしょうか。
税務署の法人税担当部門
税務署には、総務課・税務広報広聴官・管理運営部門・徴収部門・個人課税部門・資産課税部門・法人課税部門・酒類指導官・納税者支援調整官という部署があります。
法人税は、法人課税部門が取り扱っており、個別の相談や調査を行っています。面談での相談を希望する場合は、所轄の税務署に事前予約をした上で書類などを持参してください。
事前面談の予約方法は以下の通りです。
①所轄の税務署の電話番号を確認し電話をかける
②音声案内に従い「2」税務署からのお尋ねや納付に関するご相談(税務署に御用の方)を選択する
③税務署の受付担当が応答するので面接相談の事前予約であることを伝える
④担当職員につながるので予約をする
国税局電話相談センター
法人税の相談は電話でも可能です。相談方法は以下の通りです。
①所轄の税務署の電話番号を確認し電話をかける
②音声案内に従い、「1」国税に関する一般的な質問やご相談(国税局電話相談センター)を選択する
③音声案内に従い、「4」法人税を選択する
④国税局の職員が電話に出るので相談をします
※所轄の税務署については、国税庁のホームページで事前に検索してください(URL:https://www.nta.go.jp/about/organization/access/map.htm)
税理士
法人税が払えない場合、税務署に相談することが基本です。しかし、どうやって相談すればいいのか分からない場合は、税理士に相談する方法もあります。
身近に相談できる税理士がいない場合は、税理士会のホームページや知人からの紹介で、信用できる税理士を見つけてください。
お金が足りない場合は一時的な借入で対処も可能
いますぐできる対処方法として、一時的な借入で建て替えることもできるので、興味がある方はぜひご活用ください。
この調査内容の総括
法人税を滞納すると、延滞税や加算税がかかるだけでなく、最終的には差し押さえが行われます。
法人の場合、法人税を滞納し続けて差し押さえが行われると、今後の経営にも関わってきます。そのため、法人税を滞納し続けることは絶対に避けたいところです。取引銀行から融資を受けるなど、納税のための資金調達が望まれます。
ただ、場合によっては資金調達ができないこともあります。そんな時は、すぐに税務署に相談するようにしましょう。免除は難しいですが、法人税には納税の猶予制度あり、交渉次第では分割払いも可能です。
一番やってはいけないのが、法人税が払えそうにないからと、法人税の申告を行わないことです。無申告のペナルティは非常に厳しく、更に納税の負担がかかってしまいます。
法人税が払えない場合の対処方法は限られているので、法人税の納付を見据えた資金繰りを行い、法人税が払えない事態にならないようにすることが重要だと言えそうです。